MODISが捉えた積乱雲と竜巻(なぜ、竜巻を予測できなかったのか?)

 竜巻の被害にあわれた方々へ心からお見舞い申し上げます。

 東京情報大学では、竜巻の前後に衛星観測画像を取得した。この衛星観測画像は、NASAの極軌道地球観測衛星Terra(テラ)とAqua(アクア)に搭載されているMODIS(モーディス)地表面観測センサーにより観測された画像である。静止気象衛星と異なり、極軌道であることから、観測の時間が限定されるが、今回は、竜巻の発生前の積乱雲発生時(5月6日10時50分)と竜巻による被害発生時(5月6日12時30分)に、それぞれ衛星通過時刻となり、発達した積乱雲と竜巻による渦状のスーパーセルを捉えることができた。

1.衛星観測画像(RGB:143)

  図1-aと1-bは、それぞれ5月6日午前10時50分と午後0時30分にMODISにより観測された雲の画像である。それぞれ、画像をクリックすると、詳細な画像が表示されます。

図1-a 5月6日10時50分MODIS観測画像 図1-b 5月6日12時30分MODIS観測画像

2.積乱雲と竜巻の位置の推定

 図2-aと2-bに、推定した積乱雲と竜巻の位置を重ねて示す。図2-aのように4つの積乱雲が推定され、直径は5~10kmの大きさである。図2-bにおいては、竜巻にともなうと考えられる渦状の雲が観察され、南側の二つの直径は20km程度、北側の二つの直径は10km程度である。

図2-a 5月6日10時50分MODIS観測画像 図2-b 5月6日12時30分MODIS観測画像

3.移動速度の推定

 5月6日午前中に観測された積乱雲群は、午後0時30分には山梨県上空にはなく、茨城県と栃木県上空へ移動したと考えられる。気象庁の「現地災害調査速報」などにも、「被害の発生時刻に被害地付近を活発な積乱雲が通過中であった。」と報告されており、午前中の積乱雲群が、竜巻群へと発達したと考えられる。このことから、積乱雲と竜巻の中心を結ぶように移動したと推定される。

図3-a 5月6日12時30分MODIS観測画像と推定移動経路 図3-b 積乱雲から竜巻への推定移動経路

4.移動速度

 表1に、積乱雲から竜巻への推定移動距離と推定移動速度を示す。積乱雲と竜巻の中心位置の距離を衛星観測時刻差100分で割り、移動速度を求めた。約時速80kmで移動したと考えられる。

表1 積乱雲から竜巻への推定移動距離と推定移動速度

識別記号 移動距離(km) 移動速度(km/h)

Ta

130

76

Tb

148

87

Tc

132

78

Td

132

78

5.竜巻被害地上空の拡大図

 図4-aに、5月6日12時30分の竜巻被害地上空の竜巻にともなう渦上の雲の分布図を示す。また、図4-bに竜巻の中心位置と積乱雲から推定される移動軌跡を示す。雲の形状から推定される竜巻の位置は、実際の経路とズレが観察されるものの、12時30分に、①最南端の竜巻(Ta1)は、坂東市北西端にあり、この後、常総市からつくば市へ移動したと考えられる。②さらに北側の竜巻(Tb1)は、下野市と上三川町との境に位置し、真岡市から益子町と、筑西市から桜川市付近を移動したと考えられる。③また、北側の二つの渦状の雲にともなう竜巻の被害の報告はないが、気象庁によると、奥日光などでは22m/sを越える突風が観測されている。

図4-a 5月6日12時30分MODIS観測画像と推定移動経路 図4-b 積乱雲から竜巻への推定移動経路

6.なぜ竜巻を予測できなかったのか?

  やはり、国内では大きな被害を及ぼす竜巻の発生が少なく、その経験則を数式化したモデルの研究開発が遅れているためであろう。今回の竜巻は、山梨県上空において発生した積乱雲群が北東方向へ移動し、各地で突風を引き起こし、世田谷区においてヒョウを降らし、約時速80kmと高速で 移動した後の竜巻である。。短時間で変化する非常に難しい気象現象の一つであろう。しかし、午前中に関東平野が熱せられていたこと、強い南風があったことから、積乱雲の発生段階において、ある程度の予測が可能ではなかったかと考えられる。

文責:学校法人東京農業大学・東京情報大学 浅沼市男